もう今から5~6年前からだろうか、次男が保育所に通っている頃から仲良くさせてもらっている方から、宇治山田高校の校長先生を紹介してもらい、厚かましくも高校を訪問させていただいた。山高が前期選抜を実施する前の年であったと記憶している。もちろん一人で訪問する勇気もなく、知り合いの塾仲間数人と共にお邪魔した。
その頃、生徒たちに進路指導をするとき、各高校がどの様な学校なのかは本当のところはよくわからず、合格可能性ばかりが問題であった。
伊勢高校や宇治山田高校のように、比較的情報が多く入る学校であっても、先生方がどの様な考えで、生徒を指導しておられるのかとか、学校の雰囲気などはわからない。
ましては、工業高校、商業高校、農業高校、高等専門学校などに至っては就職状況、進学状況などもよくわからず、とにかく生徒を合格させることだけが大事であった。
現在、伊勢志摩を中心とするこのあたりの公立高校で、毎年、定員を超える志願者を集めている学校は、伊勢高校と宇治山田高校の2校だけである。いや伊勢高校も数年前に、創立以来初めて定員割れになり2次募集をしたというのは記憶に新しいところだ。
その他の公立高校は、志願者が、年度によって定員を超えたり定員割れになる高校、慢性的に定員割れになる高校、に分かれる。
このような状況であるから公立高校の定員はどんどん減っている。私立高校だって、募集定員を減らし続けている学校がほとんどである。この先の経営はきっと楽ではないはずだ。
合格可能性だけで生徒の進路指導をする時代ではない。各高校の特徴や内容をよく知り、生徒の性格にあった高校に進学させるべき時代だ。
「わからなかったら、行ってみればよろしいやろ。」小俣のN先生の言葉である。彼は私が山高を決死の思いで訪問する前から一人で各高校を回られていた。
「自分の勧める高校がどんな学校かもわからずに進路指導するのはおかしい。何で塾の先生たちは学校に行って聞いてけえへんのやろか。他の業種では考えられへんで。」柔らかい関西弁で彼は言う。このN先生のおかげで、それから彼を中心に毎年秋になると各高校訪問が始まった。
どこの馬の骨かもわからない塾が、突然教頭先生などに電話して訪問させてもらうのである。門前払いをくっても仕方ない、と思っていたのだが、概ね歓迎してくれた。
また行ってみると、私の知らないこと、思っていたことと違う事、などがそれこそ沢山あり、世間で思われている事と実際とは随分違うものなのだな、と認識を新たにすることが多い。
最初のうちこそ、各高校に対する理解が深まり、これを生徒の進路指導に役立てられると喜んでいた。それは今でも変わらないのだが、いくつかの学校については、もう少し発展的な方向を考えてもらってもいいし、それに対して協力できることがあれば協力させていただきたい、という考えを持つようになってきた。
あと10年もすれば、伊勢以南の南勢地区の中学3年生は500名程度減るそうである。いくつかの高校は合併したりして存続を図らなければならなくなるかもしれない。
このような状況では南勢地区の高校は積極的な広報活動が不可欠なのではないだろうか。対象となる南勢地区の生徒だけではなく、松阪地区などは10年経っても生徒数はほぼ変わらないそうだが、そのような隣接する地区からの生徒も来てもらえるようにもっともっと行動するべきなのだろう。
高校訪問は松阪地区の学校にも行かせてもらっているのだが、概して伊勢地区よりも熱心な印象を受ける。先ほど言った発展的な方向というのは、例えば松阪までの公立高校では塾向けの進学説明会を開いている学校もある。このようなことを伊勢地区の学校もどんどんやるべきではないだろうか。
伊勢地区では今年初めて、伊勢工業が塾向けの進学説明会を行った。N先生などの尽力もあり、かなりの塾の参加が見られ、高校側も教頭や校長だけでなく、先生も含めた対応で施設見学などもさせてもらい、充実した説明会であった。
塾が生徒の進路に対し持っている影響力は思いのほか大きい。30の塾を集めて説明会を開けば、1塾10名としても、300人の生徒にアピールしたのと同じ事になる。それも各中学に行ってやる説明会と違い、時間はふんだんにある。各中学での説明会では、割り振られた時間は5~10分程度であり、何ほどのこともわからない。実際私も自分の息子たちが中学生の時に行った事があるが、ほとんど何も覚えていない。
各中学に電話して(電話するのは私ではないのだが…(^_^;))仲間の塾、数名で各高校を訪れて話しさせてもらう方が、何年もやっていると親睦会みたいな雰囲気になったりもして、私にとっては、有益な情報を得られたりすることもあるのだが、高校にとっては発展的方向とは言えないだろう。
ともあれ、今年も高校訪問や説明会のシーズンとなった。少し前からとはなるが、時系列でその内容と共に各高校についての思う所などを書いてみたい。