大台ヶ原・大杉谷
新緑の季節となり、山も緑が徐々に濃くなってきた。山好きにとってはたまらない季節である。最近新聞で下記のニュースを読んだ。
2012年4月19日付の朝日新聞である。
架け替えられた「平等嵓」のつり橋
営業再開する桃の木山の家=近鉄提供
『2004年9月の台風21号による豪雨被害で中枢部分が通行止めになっていた吉野熊野国立公園の「大杉谷」(大台町)で、県は新たに登山道のうち2カ所(計3・9キロ)を26日と28日にそれぞれ開通させる。近鉄も28日、登山道沿いにある「桃の木山の家」の営業を7年7カ月ぶりに再開する。
26日に開通するのは大台林道―堂倉滝つり橋1・5キロ。また、28日はシシ淵―七ツ釜滝下避難小屋2・4キロが開通する。全長14・1キロの登山道のうち、これで通行止め区間は2・5キロとなり、三重側からは名瀑(めいばく)・七ツ釜滝までが、奈良県境の大台ケ原・日出ケ岳からは堂倉滝つり橋までが通行できるようになった。』
初めて本格的に登山をやったのは、もう35年ぐらい前になる。大学の自然保護研究会に所属していた高校時代の友達がいて、「大杉谷を通って大台ヶ原に行こう」ということになり、もう一人の高校時代の友人と三人で、松阪からバスで終点の大杉(宮川ダムのあるところ)まで行き、そこから船に乗り、第3発電所(ダム湖の水位により下船場所が変わる。水位が低いと発電所のかなり手前で降ろされる。)のところで降り、ここから登山が始まる。
のっけから岩場をくり貫いて作った鎖場が登場し、登山道の幅は黒部の水平歩道ほどではないにしろ、やや緊張を強いられる。千尋の滝(落差は160mぐらいあるそうで堂々としたものだ)、シシ淵、ニコニコ滝を経て初日は桃の木山の家という山小屋で泊まる。4~5時間の行程だ。夏の終わりで北アルプスの登山とは違い、とにかく暑い。名もない滝の下に行く吊り橋もあり、そこで一休みしたときの爽快さは忘れられない。しかし、吊り橋は時々“これは大丈夫かいな”というのがあり、一人渡るのが精一杯であった。この数年後、吊り橋の事故が連続し、皆架け替えられたそうだ。(おそろしや)また転落による死亡事故も毎年のようにあり、このときもあと1kmほどで山小屋かという頃、小さな袋を担いだ屈強な男4、5名にすれ違い、「それは何ですか」と聞いたら、「3日ほど前から捜索しとったがやっと見つかった、君らもこうならんときや。」と言われて、3人ともその後一言もしゃべらず、小屋まで我先にと駆け込んだのだった。
二日目、小屋からほど近いところにある七ツ釜滝は7つの滝と滝壷が連続する、例えようも無く美しい滝である。日本の滝100選にも選ばれている名瀑である。写真ではその迫力が伝わりにくいが、眼前一杯にこの滝である。すごい。このあとの堂倉滝もこれぞ滝という感じであり水量も多い。堂倉の滝で休んだあとは標高差にしておよそ1000mの登りである。かなりきつい。いやめちゃくちゃきつい。途中シャクナゲ平というシャクナゲだらけの場所があった。初夏の頃はさぞかし奇麗だろうなと思う。大台ヶ原まで来ると、サンダル履きの観光客がたくさんいた。何でもバスでほぼ頂上まで来られるらしい。拍子抜けである。しかしここまで来ると涼しい。やったという達成感は何物にも代えられない。
七ツ釜滝
現在まだ七ツ釜の滝~堂倉滝の吊り橋が通行できない状態である。なんでも光(テカリ)滝(七ツ釜滝のすぐ上部にある)のあたりは山が崩落しているそうで、復旧のめどは立たないそうだ。この山域は我々が行ったコースがベストである。特に紅葉の季節にめぐるこのコースは本当に美しい。しかし、七ツ釜滝までよく復旧したものだ。工事にあたられた人に心から感謝したい。桃の木小屋まで行って、七ツ釜滝を見て帰ってきてもそれはそれですばらしい。